写真 : 岩崎 寛様(特別にご許可を頂き掲載させて頂きました。)

ちりめん、西陣と中屋の万年筆を包んでくれる大切な入れ物に私達は1999年の創業以来、深い敬意と大きな価値を感じてきました。
この度、永年中屋が尊敬している染織家として、紫綬褒章、文化功労者、文化勲章などを受章され重要無形文化財「紬織」保持者(人間国宝)で いらっしゃる志村ふくみ様の技術を継承したアトリエシムラ様で制作された生地を使わせて頂けることになりました。
「植物の命をいただいて色にする」自然と対話し色を織ることに情熱を注いだ織物は人の心を浄化するようなエネルギーがあります。
絹糸を染色、糸巻、機織りという工程を経て織物に。
今回採りあげた糸の色は鼠の中でも著名な銀鼠です。
江戸時代後期に奢侈禁止令が発布され、衣服においても派手な色を使うことが出来なくなりましたが、逆に江戸っ子の気質で布の表側には茶色や 鼠色などの地味なものを、裏地には相変わらず派手な色のものを使うなどの抵抗もしていました。
古来よりこれらの色の侘び・寂びの風潮も相まって、特に一見地味と思われるこの鼠色は''ねず''とも呼ばれ、逆に禁止令の中で、現在でも有名な 深川鼠はじめ銀鼠や利休鼠など多くの美しい色が作り出されていき現在に至っています。
今回お願いした生地は、経糸の濃いグレーは樫、緯糸の淡いグレーは栗で染めて織り上げたものです。

志村ふくみ様のホームページはこちらです。

また、アトリエシムラ様のホームページはこちらです

◆中屋スタッフもアトリエシムラ成城店様にお邪魔し、研修をさせて頂きました。
 こちらでご覧頂けます。

今回の作品のご説明

1.染め

今回は、2020年の7月から始めて頂きましたので、盛夏の季節を考慮した素材を選択して頂きました。

経糸の染料である樫の葉
経糸の染料である樫の葉。
緯糸の染料である栗の葉
緯糸の染料である栗の葉。
染めて干しているいる経糸
染めて干しているいる経糸。

2.糸巻と機織り。

アトリエシムラ様で熟練した方により丁寧に織って頂きました。植物の採取から反物の完成まで、およそ3か月の
工程です。

機織り風景1
機織り風景1
機織り風景2
機織り風景2
織りあがった反物
織りあがった反物

3.縫製

中屋で縫製し完成。

中屋スタッフも草木染めの実習をさせて頂きました。

桜の枝

桜の枝。

今回の材料は早春のサクラです。この桜の枝から色を頂きます。

花が枝に付く前の枝に桜の色が息づいています。

1.染め

◆ 水に枝を入れて、煮出して色を抽出します。

◆ 炊き出した染液を取り分けます。

炊き出した染液を取り分けます
染料を漉(こ)しているところ
染料を漉(こ)しているところ
上:漉した染液がこれです。下:絹糸
上:漉した染液がこれです。
早春の桜の枝から頂いたのが
この色です。
下:絹糸

◆ いよいよ染めます。

いよいよ染めます
いよいよ染めます
染めているところ
染めているところ。
温めた染料の中を何回も絹を
泳がせて丹念に染めていきます。

違う媒染をした糸。
上が鉄媒染、下が灰汁媒染。
※媒染(鉱物を溶かした水に通すことで、色を定着させる)

2.織り

◆ いよいよ機織りです。

糸巻の工程
糸巻の工程
様々な色糸が巻かれた小管(こくだ)
様々な色糸が巻かれた
小管(こくだ)
機織りの工程と杼(ひ)
機織りの工程と杼(ひ)
少しずつ織りあがってきました
少しずつ織りあがってきました。

研修で織った布です。

経糸は運命、緯糸は生き方・・と仰った志村先生のお気持ちを考える余裕もなく一心に織っていく時間は
かけがえのないものになりました。
どうも有難うございました。

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